Business&Marketing Column
Webサイト
地方銀行
多角化
2023.07.05
今月、7月1日は「銀行の日」でした。
...「銀行条例」施行100周年にあたる1993年に、日本金融通信社によって制定されたものです。
銀行さんと直接お仕事をする機会は、あまり多くはない当社ですが...今年は、とある地域金融機関コンペへの提案協力依頼があり、業界Web動向の確認や企画を考え始めたところ...なんとコンペ自体が白紙に!!😱...なんてコトもありました。
まあ、それもイイ機会!とポジティブに...
今回は、地域金融機関(特に『地方銀行』)を取り巻くビジネス環境の変化と、その変化が及ぼすWebサイト創りへの影響について、特徴的な事例もピックアップしつつ、お届けしたいと思います。
1. 地銀を取り巻くビジネス環境
ココ数年来、マイナス金利の影響(金利収益の減少)、地域経済の衰退(資金需要の減退)、あるいはフィンテックの台頭などにより、地方銀行(地銀)を取り巻くビジネス環境は厳しさを増しています。
* (一社)全国地方銀行協会による各社決算のまとめから当社作成
上のグラフは、全国地方銀行協会が各社決算からまとめた地銀全体の「業務純益」の10年間の推移を示したものです。
業務純益の中核を占める「コア業務純益」は、2020年度以後やや持ち直し基調にあるものの、今度は、グローバルに一転した金利上昇(債券価格の下落)を受け「国債等債券関係損益」が大きく悪化、2022年度は、リーマンショック以後最低の「業務純益」を記録しています。
2. 地銀ビジネスの多角化
そうした厳しいビジネス環境を受け、地銀各社は、2021年に改正(施行)された銀行法等による「業務範囲規制の見直し」なども追い風に、ビジネスの多角化を進めています。
* (株)大和総研「急増する地銀子会社の現在地」から当社作成。「会社数」は2023年5月までの計数
上の表は、大和総研が6月に公開したレポートによる地銀の子会社数です。
このレポートからは、「投資専門会社」「証券子会社」など金融ビジネスのほか「システム開発」「コンサルティング」「地域商社」などの子会社設立が、2014年以降、大きく増加している様子が読み取れます。
* (一社)全国地方銀行協会による各社決算のまとめから当社作成
さらに、前述の各社決算のまとめから...(利益の大半を占める「資金利益(資金運用益)」ではなく)“サービス提供”から生み出される「役務取引等利益」の推移に注目してみると、ココ10年緩やかながらも増加基調を示し、また、「コア業務粗利益」に対する割合も、年々高めている様子が確認できます。(それでも、まだ15%に満たない水準ではありますが...)
3. サービス・機能の多角化とWebサイト
ココまで、地銀の経営環境(環境の厳しさとそれに伴う多角化)の動向について確認してきました。
では、こうしたビジネスの多角化が、地銀各社のWebサイト創りにどのような影響を与えているのでしょうか?...ココからは、地銀サイトにフォーカスし、その影響等について話を進めていきたいと思います。
なお、「システム開発」「コンサルティング」「地域商社」子会社に代表される金融以外のサービスは、直接のターゲットを【B2B】としていることが多いため、基本、【法人・個人事業主向けページ(主にTOPページ)】を対象に確認しています。
地方銀行[全62行]の対象ページをひととおり確認してみると...
やはりまだ、多くの地銀では
○ 資金調達(運用)
○ 事業・経営サポート
など、これまでの主力業務を中心に訴求しているWebサイトが、主流になっていました。
...この点は、「銀行経営に占める多角化事業の割合」「多角化の担い手の多くが子会社(地銀本体ではない)」、また「同業他社との競争が、そこまで激しくない業界だった」というコトなどからも、当然と言えば当然と言えるでしょう。
ただ、そうした中でも、新しい銀行のサービスや機能を中心に(あるいは、主力の金融サービスと同等レベルに)訴求している地銀サイトも、一定程度存在しています。
次の章では、そんな取り組みを行っている地銀サイトの事例を紹介していきます。
4. 多角化サービスを訴求する地銀サイト(事例)
ビジネスポータル
<横浜銀行サイト(法人・個人事業主のお客さま)の例>
比較的多くの地銀サイトで見られたのがこの事例。
ネットバンキングなどを含め、ビジネス利用シーンが多い各種サービスを「ビジネス(Web)ポータル」としてまとめて提供し、それをメインに訴求しています。
...時代に即した利便性を訴求することで、既存顧客の離反防止や、金融周辺サービスの新たなバリュー獲得などにつなげたい意図があるものと思われます。
提携Webサービス
<静岡銀行サイト(法人・個人事業主のお客さま)の例>
近しいパターンでは、ビジネスに役立つ「提携サービス」をメインエリアで訴求する例も。
この例では、ココペリ社「BigAdvance」、MoneyFoward社「Mikatanoワークス」の2つのサービスが大きなシェアを得ているようです。
...ちなみに、「システム開発」子会社の増加に関わらず、自社(子会社)開発サービスを大きく訴求している例は、残念ながら発見できず...
他に、他社と一線を画す提携サービスをメインビジュアルに配置していたのは、ちば興銀サイトの「オンライン・ラーニング」です。
<千葉興業銀行サイト(法人のお客さま)の例>
商談会・セミナー
<福井銀行サイト(法人のお客さま)の例>
(Webサービスではなく)リアル接点のサポート機能を大きく訴求する例も、少ないながら存在。
例えば、福井銀行の例では、メインビジュアル直下の準一等エリアを用い、大きく訴求しています。
...地域特性にも合わせて、金融サービス以外の接点で、顧客層の拡大を目指す戦略の一環と思われます。
コンサルティング
<山口銀行サイト(法人のお客さま)の例>
コンサルティングを主軸に打ち出す例も、「ビジネスポータル」と並んで比較的多い事例。
特に、山口銀行(同じグループの北九州銀行)は、「資金調達」「事業・経営サポート」などの一般的メニューを廃止し、B2B向けTOPページ全体で統一的な訴求を行っており、他行に見られないレイアウト構成となっていました。
...金融サービスとも親和性の高いコンサルティング・サービスは、周辺・関連領域含めトータルで顧客バリュー獲得拡大を目指す方針に依拠しているものと思われます。
なお、コンサルティング関連では、「事業承継」「脱炭素支援」など特定領域にフォーカスしたサポートを打ち出すパターンも何社か存在。
...より時代の顧客ニーズに最適化し、新規・既存問わず新たな需要取り込みを目指しているものと思われます。
<十六銀行サイト(法人のお客さま)の例>
また、関連した例として、東北銀行が「アグリビジネス支援」にフォーカスしたサイト訴求を行っており、他行に見られない独自路線として印象的です。
<東北銀行サイト(法人のお客さま)の例>
地域商社
<秋田銀行サイト(法人・個人事業主のお客さま)の例>
銀行ビジネスとして、(10年前には)ほぼ見られなかった「地域商社」をメインの一つに打ち出している例は、確認できた範囲では、秋田銀行“1行”のみ。
...地域経済活性化の役割としても、今、耳目を集めるホットな領域ですが...地銀本体のWebサイトでの展開は、寂しい結果に。ビジネスの成功に向けても、マーケティング力が問われる分野だと思われますので、地銀本体サイトでの今後の取り扱いにも、注目していきたいと思います。
以上、今回は、地銀の経営環境の変化に伴うWebサイトの動向を見てきましたが...
地銀全体の傾向としては、やはりまだまだ画一的なサイト構造により、新たなサービスや機能は限定的な訴求にとどまるサイトが多い印象です。多角化の進展により、これからはマーケティング面での巧拙も、地銀経営を左右する時代に入りつつあります。
そのため、より個性あふれる、そしてより目的のユーザーに伝わるサイト創りへ。今後の地銀サイトの新たな展開や革新にも期待してみたいと思います。
また、今回は地銀にフォーカスしたコラムをお届けしましたが...全国に254ある信用金庫や145ある信用組合も、(利益を追求する法人ではないとはいえ...)経営環境の厳しさは同様の認識です。
しかも、Webサイトの活用において、地銀以上に遅れている面がある点は否めません。こちらに関しても、また機会があれば、その動向などについてお届けしたいと思います。
当社では、Webマーケティング強化を図って行きたい企業様向けに、Web解析などデータに基づくマーケティング戦略(運用)支援などのサービスを行っております。
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