Survey Reports

企業サイト(Webコンテンツ)に「SDGsへの取り組み」を掲載している割合は約30%、「17の個別目標」にまで言及している割合は約25%。

企業サイト「SDGsへの取り組み」掲載状況調査(東海4県の上場企業対象)

調査

SDGs

企業サイト

2021.09.15

企業のSDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)への取り組みを活かしたマーケティング支援なども手掛けるLifeTimeTechLabo Inc.では、今年もSDGsの国連サミットでの採択記念日(9月25日)が迫る中、『企業のSDGsへの取り組み』に関する【企業(コーポレート)サイト*】上での掲載&取り扱いに着目し、東海4県の上場企業を対象とした独自の調査を実施いたしました。
*1: 今回の調査は「企業(コーポレート)サイト」のうち「日本語サイト」のみが対象

調査結果サマリー

  • 企業サイト(Webコンテンツ)に「SDGsへの取り組み」を掲載している割合は、全体の約30%、「17の個別目標」にまで何らかの形で言及している割合は、全体の約25%。
  • 東証一部上場企業で「SDGsへの取り組み」を掲載している割合は、全体の約35%を占めるのに対し、東証マザーズなどいわゆる新興市場上場企業では、掲載が確認できなかった(0%)。
  • 業種別で、「SDGsの17の個別目標」まで言及している割合が高かったのは、「輸送用機器(約47%)」「ガラス・土石製品(約43%)」「銀行(40%)」など。
  • SDGsの17の個別目標のうち「重点目標」を設定し、掲載している割合は、全体の約24%。
  • 各企業が企業サイトに掲載している「重点目標」は、「12. つくる責任つかう責任(約96%)」「8. 働きがいも経済成長も(約95%)」「13. 気候変動に具体的な対策を(約82%)」など。

調査結果詳細

まず最初に、各企業サイトに「SDGsへの取り組み」に関する掲載があるかをGoogleで検索の上、目視にて確認してみると、Webコンテンツに一定の掲載*が確認された割合が、対象企業全体の「30.4%」であった。
また、企業として重点目標や取り組み事例などとして「SDGsの17の個別目標の番号」にまで言及があった割合は全体の「25.2%」であった。
さらに、この「SDGsの17の個別目標の番号」にまで言及があった割合を、統合報告書(サスティナビリティレポート)、SDGs宣言、中期経営計画など各種「PDF等のファイル」での言及にまで拡張すると、その割合は「38.3%」であった。

企業サイト「SDGsへの取り組み」掲載状況

*2: 対象とする「Webコンテンツ」「掲載」は、次の各項目に該当するものを除くものとして定義
(1) 個別の「商品・サービスページのみ」での掲載を除く
(2) 個別の「お知らせ・ニュース・トピックスなどのみ」での掲載を除く
(3) PDF等の「ファイルのみ」での掲載を除く(ただし、上表の分類 [C]に関しては、ファイルでの言及を含む)
(4) 掲載の最低限のラインとして「SDGsロゴ・アイコンの掲載」もしくは「SDGsという用語に項目見出し以上での言及」がない場合を除く
  ex. “本文テキスト上のみ”で、SDGsという“用語に触れているのみ”の場合などは、該当Webコンテンツに含まず

今回の調査からは、上場企業においても「SDGsへの取り組み」を掲載している企業の割合は、まだまだ過半数に及ばないものの、一方で、掲載している企業においては、その80%以上が、総論にとどまらず「17の個別目標」にまで言及していることが分かった。
また、一定数の企業は、その取り組みが記述された「各種レポートをPDFファイル等」にしてそのまま企業サイトに掲載するにとどまり、コロナ禍でデジタル接点の役割がより重要になるなか、SDGsを通じたステークフォルダーとのコミュニケーションに課題を感じられる結果となった。

なお、今回の調査は、あくまで「企業サイトへの掲載」状況の調査で、必ずしも各企業の実際のSDGsへの取り組み自体の有無とは一致しない点は、予め注記しておく。

続いて、この調査の結果を、所属する上場市場区分ごとにまとめ直すと、【表2】のとおりの結果となった。(*3)
この表では、「東証一部」上場企業では「43.0%」の企業サイトにSDGsへの取り組みに関する掲載があり、「東証二部」や「名証二部」の企業でも「23%強」の掲載があったのに対し、「東証マザーズ」「JASDAQグロース」「名証セントレックス」に上場する企業では「1社も掲載がない(0%)」ものとなった。

[上場市場別]企業サイト「SDGsへの取り組み」掲載状況

*3: 重複上場している企業に関しては、上記表の上位にある市場を優先して該当市場を選択

この点、企業規模も大きく、また人的その他保有リソースにも比較的余裕がある企業が多い“大企業・中堅企業群”と、企業規模もまだ比較的小さく、企業の成長にリソースを全力投下する必要のある“新興企業群”においては、SDGsへの取り組みに対するプライオリティの差が(少なくとも2021年調査時点においては)明確に感じられる結果となった。

また、今回の調査結果を業種別にし、さらに、表項目の[B]割合の順にまとめ直すと、【表3】のとおりとなった。(*4)
この表では、分母となる対象企業サイト数が業種ごとに大きなバラツキがあるため10以上の対象企業が属する業種に限定した結果を述べると、「輸送用機器」「ガラス・土石製品」「その他製造」「電気機器」など製造業に属する業種の他、「銀行」が上位となった。
一方で、(「金属製品」など一部製造業も含まれるものの)「情報・通信」「小売」「サービス」などのサービス系の業種が下位を占める結果となった。

[業種別]企業サイト「SDGsへの取り組み」掲載状況

*4:「水産・農林」「鉱業」「石油・石炭製品」「非鉄金属」「海運」「空運」「保険」「その他金融」の業種は、対象となる企業が存在せず

上記の結果は、SDGsへの取り組みに対する姿勢に、当該企業が対象とするマーケット(市場)が一つの要因として影響していることを示唆しているものと考えられる。
つまり、グローバルなサプライチェーンに組み込まれていることが多い“製造業”などは、市民、金融機関、取引先などから『(ESGなども含む)持続可能性』観点での取り組みに既に厳しい視線が注がれるようになっているのに対し、内需型が多い“サービス系業種”では、(調査時点における)日本国内での関心が欧米ほどにはまだ高くはなく...まだそこまでのプレッシャーにさらされていないことが、このような業種ごとの掲載数の違いを生み出しているとも捉えられる。

なお、この点【表2】における新興企業群も、内需型産業に属するものが多く、対象マーケット(業種)の影響を受けている可能性も大きいと考えられるため、念のため補足しておく。

さらに、「17の個別目標の番号」にまで言及があった企業のうち、企業としての重点目標を設定・掲載しているかどうか?の観点で深掘りしてみると、次の【表4】のような結果になった。(*5)
なお、この表は【表1】で分類[C]に含まれる企業サイトを対象としている。

SDGsの17の個別目標の番号に言及している企業「38.3%」のうち、「24.2%」が重点目標を設定しており、残りの「14.1%」は、個別の重点目標を設定・掲載せず、目標番号をそれに関連する取り組み事例・実績の紹介などとともに掲載しているにとどまっている。

企業サイト「SDGs重点目標」掲載状況

*5: 対象とする「SDGsの重点目標」の設定・掲載は、次のとおりとして定義
(1) 自社にとっての「重要課題(マテリアリティ)」を特定し、その課題と対応する形で関連づけられているSDGsの取り組み目標(目標番号を指定して掲載されているもの)
(2) 上記に関わらず、「重点目標」「取り組み目標」等として掲載されているSDGsの目標(目標番号を指定して掲載されているもの)
  cf. 目標を予め設定せず、単に「取り組み事例・実績」等として掲載されているSDGsの目標(番号)は、対象外とする
(3) その他「すべてのSDGsの目標番号」を目標として設定している場合は、「重点目標」の設定・掲載に該当しないものとした。

この結果は、個別の目標番号にまで言及している場合は、重点目標を設定・掲載している割合が「60%」を超えるものの、残りの「40%弱」は、事例・実績に関連する目標(番号)として言及していることを示しており、企業ごとに大きくSDGsへのアプローチが分かれる結果となった。
なお、このアプローチの違いが何を主要因とするか?に関しては、ここまでの集計・分析では不明なため、今後の考察課題として捉えたい。

最後に、【表4】の重点目標を設定・掲載している企業が、具体的にどのSDGsの個別目標を設定しているか?を調べて見た結果が次の【表5】である。
この表からは、「12. つくる責任つかう責任」「8. 働きがいも経済成長も」は、目標を設定している企業の「90%超」が設定し、「13. 気候変動に具体的な対策を」も「80%超」の企業が設定していることが見てとれる。
一方で、「1. 貧困をなくそう」「2. 飢餓をゼロに」は「20%未満」、「14. 海の豊かさを守ろう」は「30%未満」と設定している企業が少なく、目標によりかなり大きなバラツキがあることが見てとれる。

企業サイト「SDGs個別重点目標」設定状況

当然のことであるが、SDGsの17の各個別目標も、“企業活動”にとっての取り組み難易度に差があるものと想定され、「12]「8」などは企業活動とまさに直結する目標として、積極的に選択されている傾向があるものと感じられる。
一方で、「13」に関しては、近年(特にグローバルに事業を展開する)企業に強力に求められるようになった「ESG(のうちでも、特にE視点の)経営」や、あるいは「脱炭素経営」といった流れを汲んでの選択と考えられるものとなっている。

今回のレポートでは、企業のSDGsへの取り組みに関し「企業サイト(Webコンテンツ)での掲載状況/目標設定・掲載状況」を中心に記載したが、引き続き考察を続け、今後機会があれば、企業サイト(Webコンテンツ)上での取り扱いレベルなど。追加情報も報告できるようにしたいと考えている。

調査概要

東海4県の上場企業の企業サイトを対象とする「SDGsへの取り組み」掲載状況調査

調査方法 1. Google検索[Site:]コマンドを用い、各企業サイトを「sdgs」で検索
2. 各企業サイトを訪問し、対象コンテンツを目視で確認
調査期間 2021年7月16日 - 2021年8月15日
調査対象 東海4県の上場企業の企業サイト:326
<都道府県ごとの内訳>
愛知県:226
岐阜県:30
三重県:19
静岡県:51

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