Survey Reports
企業の気候変動対策への取り組みが「商品・サービス選択行動に影響した」経験があった人ほど、各企業の姿勢を非常に高く評価する傾向。
インターネット調査
脱炭素社会
気候変動対策
2022.06.20
企業のSDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)への取り組みを活かしたマーケティング支援なども手掛けるLifeTimeTechLabo Inc.では、6月5日【世界環境デー】に向けて、日本の脱炭素社会(気候変動対策)への取り組み・現状に対する理解、生活者自身の行動、そして企業の取り組みに対する評価などを把握するためのインターネット調査を実施いたしました。
今回は、前回(6月2日)報告分に加えて、いくつかの設問に対し、性別(性年代別)集計、クロス集計を行った追加のレポートを公開いたします。
調査結果サマリー
- 日本の「温室効果ガス削減目標」を聞く設問*に対し、「46%」「50%」を選択した割合は、男性では年代が上がるほど上昇。女性は年代による変化はあまりない。
- 「ゼロカーボンアクション30」の各項目で、「取り組んでいる*」と回答した割合は、全体で高かった項目ほど、女性はさらに高く、逆に、低かった項目ほど、男性が高い。
- 自身の取り組み(取り組み強化)のきっかけとなった事象・出来事を聞く設問に対し、女性は「レジ袋の有料化」が1位に。また、価格の上昇関連の選択割合が軒並み高い。
- 「ゼロカーボンアクション30」の各項目で、「取り組んでいる*」との回答した割合は、いずれの項目でも[Q1*]の設問で「分からない」と回答した人ほど低い傾向。
- 「各企業の取り組み姿勢への評価」を聞く設問に対し、「積極的*」と回答した割合は、いずれの企業でも[Q5*]の設問で「あった*」と回答した人ほど、顕著に評価が高い。
*1:2021年4月に表明した2013年度対比の削減目標
*2:「取り組んでいる」=「概ね取り組んでいる」「一部取り組んでいることがある」の合計
*3:[Q1]=日本の「温室効果ガス削減目標」を聞く設問
*4:「積極的」=「とても積極的」「やや積極的」の合計
*5:[Q5]=「企業の気候変動対策への取り組み姿勢」が商品・サービス選択に影響した経験の有無を聞く設問
*6:「あった」=「おおいにあった」「たまにあった」の合計
調査結果詳細
まずは、いくつかの設問を性別(もしくは性年代別)ごとに集計してみた結果が次のとおりである。
[Q1]日本政府が表明した「2030年度における(2013年度比の)温室効果ガス削減目標」を聞く質問に対し、正答となる【46%】、または「さらに50%の高みに向けて挑戦を続ける」とした[50%]を選択した割合は、男性では、20代が最も低く「9.0%」、逆に60代が最も高く「24.0%」となっており、その差も「15ポイント」と比較的顕著な差が見受けられた。
一方、女性では、最も低いのが「30代(3.0%)」、最も高いのが「40代(7.0%)」と、年代の変化による差はそれほど見受けられなかった。
また、同じ[Q1]の設問で、[分からない]を選択した割合は、男性では、「30代」を除き、年代間の差はそれほど大きくなかった一方で、女性は、「20代(56.0%)」と「60代(69.0%)」との間で、その差が「14ポイント」と比較的大きくなっていた。
続いて、[Q3]「ゼロカーボンアクション30」のアクションリストに関して、「自身の日常生活での取り組み状況」を聞く質問に対して、「取り組んでいる」(「概ね取り組んでいる」「一部取り組んでいることがある」の合計)との回答割合は、女性では、「節電([女性]79.0%/[全体]73.3%)」「ごみの分別処理([女性]76.0%/[全体]71.5%)」「節水([女性]76.4%/[全体]71.1%)」など全体で【上位】に入った項目ほど、その割合がより高く出現する傾向にあった。
一方で、男性では、「ZEH([男性]19.8%/[全体]15.1%)」「蓄電地(車載の蓄電池)・蓄エネ給湯機の導入・設置([男性]18.4%/[全体]15.3%)」「個人のESG投資([男性]21.2%/[全体]17.0%)」など全体で【下位】にある項目ほど高くなる傾向にあった。
*「取り組んでいる」=「概ね取り組んでいる」「一部取り組んでいることがある」の合計
この集計の最後に、[Q3]の「取り組みを始めた(取り組みを強化した)きっかけとなった事象・出来事」を聞く質問に対しては、全体では2位であった「レジ袋の有料化([女性]48.3%/[男性]30.1%)」が、女性では最も高くなっており、さらに「電気・ガス代の上昇([女性]40.3%/[男性]29.1%)」「食品価格の上昇([女性]35.2%/[男性]22.5%)」「ガソリン価格の上昇([女性]32.3%/[男性]24.7%)」など価格の上昇関係の項目が、男性に比較して顕著に高い傾向にあった。
これら性別(性年代別)ごとの集計結果からは...
この社会課題に関し、20代の正確な理解度が低い点は、性別を問わず共通の一方で、男性は、年代が上がると理解が高まるのに対し、女性は、ほとんど変わらない(むしろ「分からない」の回答を含めると、反対の傾向に近い)ことが浮かび上がってきた。
...その要因は本調査からは不明だが、おそらくは、仕事関係(職種・役割、それに伴う学習環境等)の経験の違いが一定程度影響しているものと推察される。
また、具体的アクションに関しても、脱炭素を直接意識せず日常の習慣として行える項目に関しては、女性の方が(特に、生活費に直結する価格上昇を契機として)取り組んでいる傾向にあるが、脱炭素を意識して行動する必要あると思われる項目では、男性の方が、積極的に取り組んでいる様子がうかがえる結果で...この点は、この社会課題への理解(関心)と一定程度相関があるように思われる。
次からは、2つの設問を、それぞれ関連する項目でクロス集計した結果を報告する。
最初に、[Q3]で「取り組んでいる」(「概ね取り組んでいる」「一部取り組んでいることがある」の合計)との回答割合を、[Q1]の回答状況とクロスした結果が次のとおりであった。
*「取り組んでいる」=「概ね取り組んでいる」「一部取り組んでいることがある」の合計
この表を見ると、全体として各項目とも、[Q1]で【46%】[50%]と回答した者の割合が最も高い傾向にあるが、[50%以外の誤回答者]との差はそれほど顕著ではなく、「ZEH」「太陽光パネルの設置」など特に住居関連の項目では、逆転を許している項目もあった。
他方、[分からない]との回答者は、上記2つと比較して、いずれの項目でも一定以上低い結果となっていた。
この【誤回答】と【分からない】の回答者の差に関しては、今回の調査結果のみから断定的なことを言うことはできないが...この社会課題に対して、(理解以前に)関心の差が、この結果につながったのではないかと推察される。
なお、【正答(に近しい)者】と【誤回答者】の住居関連の項目が逆転している現象に関しては、年代構成の違いが影響している可能性もあるので、念のため補足をしておく。
次に、[Q6]「各企業の気候変動対策(温室効果ガス排出量削減)への取り組み姿勢」を評価してもらう設問に対し、「積極的」(「とても積極的」「やや積極的」の合計)と回答のあった割合を、[Q5]「企業の取り組み姿勢が、商品やサービスの選択・消費行動に影響したことがあったか?」の回答状況と重ね合わせて見た結果が次のとおりであった。
*「積極的」=「とても積極的」「やや積極的」の合計
*「あった」=「おおいにあった」「たまにあった」の合計
*「なかった」=「ほとんどなかった」「まったくなかった」の合計
この表では、[Q5]の「あった」「なかった」「分からない」との回答者ごとに、“個別企業の評価”傾向が、そこまで異なることはなく、それ以上に「あった」との回答者が、“どの企業の取り組み姿勢”をも、非常に顕著に「積極的」と評価している結果が目立つものとなっていた。
ここでは、「気候変動」という社会課題に対する「企業の取り組み姿勢を(少しでも)意識して」行動している生活者が、各企業の取り組み内容を【非常にポジティブに】捉えていることが端的に分かる結果となっており...ということは、この社会課題に対する生活者の理解(関心)を深めること自体が、企業ブランドの価値向上に直結する可能性があると認識されうる。
この社会課題に対して、“企業自らの発信による” 積極的な啓蒙活動も期待したいところである。
調査概要
脱炭素社会(気候変動対策)への取り組みに対する生活者の理解と行動に関する調査
調査方法 | インターネット調査 |
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調査期間 | 2022年5月20日 |
調査対象者 | 全国20代 - 60代男女 (アイブリッジ(株)「Freeasy提携パネル」利用) |
有効回答数 | 1,000サンプル ※性年代別に均等割付 |
設問数 | 6問 |
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