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日本の2030年度における「温室効果ガス削減目標(数値)」を正確に把握している割合は、わずか4.3%。
インターネット調査
脱炭素社会
気候変動対策
2022.06.02
企業のSDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)への取り組みを活かしたマーケティング支援なども手掛けるLifeTimeTechLabo Inc.では、6月5日【世界環境デー】に向けて、日本の脱炭素社会(気候変動対策)への取り組み・現状に対する理解、生活者自身の行動、そして企業の取り組みに対する評価などを把握するためのインターネット調査を実施いたしました。
*1:2021年4月に表明した2013年度対比の削減目標 *2:「概ね取り組んでいる」「一部取り組んでいることがある」との回答の合計
今回の調査は、(各性年代別ごと100人づつの)20代~60代の男女[計1,000人]を対象に、インターネット調査の手法で実施している。
まず第1問目として、2021年4月に日本政府が表明した「2030年度における(2013年度比の)温室効果ガス削減目標」を聞く質問を、(20%~80%の1%刻みによる)選択式で行った結果の正誤率が、次のグラフのとおりである。
「分からない」との回答割合が「55.2%」と全体の過半数を占め、正答となる【46%削減】を選択した割合は、わずか「4.3%」に過ぎなかった。また、日本政府が「さらに50%の高みに向けて挑戦を続ける」とした[50%削減]を選択した割合が、「6.7%」で正答率を上回るものとなっていた。
さらに、この正誤率の結果を、男女で比較すると、女性の正答率は「2.8%」と男性の「5.8%」を大きく下回り、半分未満の値であった。また、[50%削減]の選択割合も非常に少なく、かつ「分からない」との回答割合も、男性を上回る結果となっていた。
なお、参考として、この設問に対する全体の回答分布のグラフも掲載しておく。
*補足:80%削減に近い方の回答割合が高くなっている点は、多少「選択肢の並び順」による影響が出ている可能性があります。
次に、環境省が、2022年4月に公表した「2020年度の温室効果ガス排出量(確報値)」に関して、「部門別CO2排出量(電気・熱配分後)が2013年度比で増加している部門」を聞く質問を、選択式で行った。 (やや、ひっかけ問題気味の設問設定となってしまった点は反省点)
この設問の正誤率では、(選択肢の中での)正答となる【増加している部門はない】の割合は「5.1%」のみで、前問同様「分からない」の割合が「57.6%」と最も高く、(2013年度比での)実際の削減率の大きい[産業部門][業務その他部門]のいずれかを選択した誤回答の割合も「24.7%」と約1/4に上った。
また、男女間の比較では、(前問ほどではないにしても)同様に女性の正答率がやや低く、同時に、女性の「分からない」との回答割合は、前問以上に多い結果であった。
この設問に関しても、参考として、全体の回答分布のグラフを掲載しておく。
ここまで2つの設問における正答率の低さ(「分からない」回答の多さ)からは、日本の脱炭素社会の実現に向けて、そもそもの前提となる「目標」や「現状」の理解(さらに言うと...おそらくはこの社会課題への生活者の「関心自体」)の低さを如実に反映するものとなっていた。
特に、菅政権時代に掲げた(日本としての)非常に野心的な目標達成に向けては、(2013年度比では減少しているものの...)「前年度比」では唯一増加に転じている【家庭部門】の排出量削減の取り組みも必要不可欠と考えられるため、まずはその“最初の第一歩”として、生活者の関心醸成や理解促進への取り組み強化の必要性を痛感させられる結果となっているのではないかと思われる。
続いて、国・地方脱炭素現実会議が、2021年6月に取りまとめた「地域脱炭素ロードマップ」の中で、日常生活における脱炭素行動として整理、紹介している「ゼロカーボンアクション30」のアクションリストに関して、「自身の日常生活での取り組み状況」を聞く質問を行った。
さらに、前問で1項目でも「取り組んでいる」(「概ね取り組んでいる」「一部取り組んでいることがある」のいずれか)を選択した人に対して、「取り組みを始めた(取り組みを強化した)きっかけとなった事象・出来事があったか?」を例示して聞いたところ、「平均気温の上昇(42.5%)」が最多の回答となり、続いて「レジ袋の有料化(39.5%)」、「電気・ガス代の上昇(34.9%)」となった。 なお、電気・ガス代以外にも「食品価格の上昇(29.1%)」「ガソリン価格の上昇(28.6%)」など価格の上昇関係の項目は、軒並み上位の回答を集めた結果となっている。
最初2問の「理解」に関する回答状況とは様相が異なり、これら設問の結果では、脱炭素につながる行動を“全く取っていない”人は、ごく少数にとどまっていた。 ただし、回答項目を個別に見ると、(おそらく、脱炭素をあまり意識せずに...)習慣として日常的に身近でできることは、かなり多くの人が取り組んでいる一方で、中長期的な削減効果が大きいと期待される「住居」関連や、社会的な働きかけへもつながる「投資」などの項目は、取り組み状況が非常に低く、“脱炭素を意識して(しかも、そのコストも含めて)”検討が必要となる項目に関しても、そうした行動がとれるようになるか?が今後の分水嶺と感じられる結果であった。
また、取り組みのきっかけとなった事象・出来事に関しても、『価格』要因をあげる回答者が非常に多く、自発的というよりは、“必要に迫られて”...という動機が大きいことを感じさせるものとなっており、その行動の持続性も今後、問われる可能性がある。と思われる結果でもあった。
ちなみに...昨今、その排出量削減効果を巡って議論のある「レジ袋の有料化」に関しては、(直接的効果はおいて置くとしても...)“間接的に”削減を促すという意味においては、非常に意義のある政策であったのではないか?と本調査からは捉えられる結果になっている。
そして、本調査の最後に「企業の気候変動対策(温室効果ガス排出量削減)への取り組み姿勢」に関する質問を2問行っている。
続いて、最後の設問として、一般生活者になじみのある業種に属する企業の中から、企業名を例示して「各企業の気候変動対策(温室効果ガス排出量削減)への取り組み姿勢」を評価してもらう設問を行った。
※ なお、企業名の例示にあたっては、東証プライムに上場している企業を前提に、各業種ごと「SBT認定」を既に受けている企業とそうでない企業を対にするように選定を行っている。
この設問の結果としては、同業種の企業同士の比較では、「SBT認定」を受けている企業群の評価の方が、微妙に高い傾向にあるように見受けられる(ただし、すべてではない)ものの、あまり顕著な差は認められないものであった。
それ以上に、「輸送用機器」「(一部の)小売業」に属する企業の評価が高く、「医薬品」「その他製品」の企業が低いなど、業種間の格差の方が目立つ傾向となっていた。 (ただし、例示した企業個別の要因にもよるので、本調査のみからは確定的なことは言えない点は、補足しておく。)
<例示した企業名とそのTCFD賛同、SBT認定状況(本調査実施時点)>
これら最後の設問からは、企業の気候変動対策(温室効果ガス排出量削減)への取り組み姿勢が、消費行動に影響する場面はまだまだ少ないと捉えられるものの、一方で、何らかの影響を与えている割合も無視できるほど小さくはないと考えられるものであった。
また、各企業個別の評価においても、その企業のTCFDやSBTなどの国際的イニシアティブへの参画状況が影響する可能性は、現状、全体的にはごく小さいものと思われるが...「企業の取り組み姿勢が商品・サービスの選択行動に影響があった」との回答者に限定すると、「各企業の取り組み姿勢の評価」で「分からない」との回答が大きく減少する傾向にあるなど、今後、その理解が広まれば(...というよりもむしろ、企業側から積極的に理解を広めていければ)他社との差別化要因になりうる可能性を秘めているものと捉えられる結果ともなっていた。
なお、上記の点など、各設問をクロスした集計結果などについては、今後機会があれば、報告したいと考えています。
脱炭素社会(気候変動対策)への取り組みに対する生活者の理解と行動に関する調査(追加レポート)
国際的イニシアティブ(TCFD/SBT/RE100)参画に見る日本企業の脱炭素経営の流れ
業種別CO2排出量とTCFD/SBT/RE100に対する企業の取り組み
GX(グリーントランスフォーメーション)基本方針の用語解説