Business&Marketing Column
Web解析
GA4
ビジュアライゼーション
2022.05.15
今年、2022年3月にGoogleより発表された「2023年7月1日をもってのユニバーサルアナリティクス(UA)による新しいデータ処理終了」のアナウンスで、Web業界にも、今ちょっとした激震?が走っているように感じられます。
そこで、今回は、Googleアナリティクス4プロパティ(GA4)への完全移行に伴い、Web解析実務においてどのような変化が起こるのか?...その新たなデータ探索手法とビジュアライゼーションの観点で簡単な考察を行ってみたいと思います。
ただし、当社でもGA4によるデータ蓄積やレポーティング活用は、まだまだこれから!といった状況ですので、『現時点での理解』という注釈付きでお付き合いください。
1. Web解析におけるUA→GA4の変化のポイント
UA→GA4では、一度その画面を覗いていただければ、すぐに分かると思いますが...今までの新しいレポートが漸次追加されていくレベルの進化とは異なり、劇的な変化が起きています。
これは、ユーザーのWeb(+アプリ)閲覧環境の多様化に対応するため、クロスデバイス&クロスプラットフォームの一元的なデータ収集・計測を志向するGA4では、データ計測レベルから抜本的な見直しが行われたことに大きく起因しています。
ちなみに、UA⇔GA4の比較に関しては、インターネット上で様々な解説記事が掲載されていますので、細かな点はそうした記事をご参照いただければ。と思います。
(でも、UAのインターフェースに慣れ親しんだ身としては、ヤッパリとっつきづらいなぁ。というのがまだまだ正直な感想です。...ということで、当社でも、その対応を、これまでちょっと先延ばしにしておりました。)
さて、そのように劇的な変化を遂げたGoogleアナリティクスですが...それら変化の中でも、GA4での解析における本質的なポイントは、GA4では「ユーザー」ベースのデータ計測概念が採用されたため、(単一のセッションではなく)中長期にわたる複数回の訪問行動を串刺にした、まさに『ヒト(ユーザー)単位』の行動解析!が本格的に求められるようになった点ではないかと感じております。
この点、UA以前でも「ユーザー指標」は当然採用されておりましたが...「セッション」によるデータ計測が基盤になっていたため、どうしても『(単一の)セッション単位』の行動解析(概念・指標)に多くの視点がとどまっていた。という認識です。
解釈イメージとしては、次のイメージ図も併せてご覧ください。
① UA以前のWebデータ行動解析イメージ
② GA4でのWebデータ行動解析イメージ
2. GA4時代に要求されるレポーティングスキル
もう一つ、GA4関連の話題では、従来、当然のごとく使用されていた指標の改廃(ex.上記イメージ図にもある「直帰率」の廃止)が取り上げられることが多いという認識ですが...今後の解析実務としては、よりレポーティングスキルが要求される!ようになったという点が、非常にインパクトを持ってくるものと考えています。
この点は、GA4のメインメニューに「レポート」と「探索」が並んで位置づけられていることにも、その思想がよく表れていると思います。
UA同様に、GA4でもデフォルト(既定)のレポートは、上記「レポート」メニュー内にいくつか用意されています。ただし、そのレポート数は大きく減少し、さらに、(パネル形式の採用によって)単一指標のみを表現しているものも多いので、実質的なレポーティング項目は、それ以上に減少している。という印象です。
一方で、「探索」メニューとは、自らのサービス(ビジネス)モデルにあったデータ探索のレポートを自ら創り出していく必要があるメニューです。(参考となるテンプレートは用意されていますが、そこから先は自分で創作していくしかない!)
この構成の意図は、おそらく、従来のWebのみ/単一のセッションベースの行動は、概ね類型化でき、デフォルトの分析レポートでも間に合わせることができたのに対し...クロスデバイス&クロスプラットフォーム/集計値となるユーザーベースの行動は、それぞれのサービスモデルごとに多種多様にわたるため、当然、それに対応する行動分析も“自分自身”で探求していく必要がある。という考え方が根底にあると考えられます。
もちろん、デフォルトのレポートも徐々に拡充されていく可能性はあるとの認識ですが...基本的には、自身のデータ探索力、レポーティング創作能力が問われるようになった点は間違いありません。
この点、UA時代から「カスタムレポート」を駆使してWeb解析に取り組んでいた皆さまにとっては、それほど障害にならないかも知れませんが...デフォルト(既定)レポートに多くを依拠していた皆さまにとっては、そこのハードルを超えていかないと、ますますデータ活用の格差が開くツールになっていると言えるでしょう。
次章からは、その探索メニューに用意されている特徴的な「探索手法」と「ビジュアライゼーション(GA4では「ビジュアリゼーション」の用語を使用)」について簡単に触れて行きたいと思います。
3. GA4のデータ探索手法
GA4の探索レポートにおいても、UAでの「カスタムレポート」同様、自由に「ディメンション」と「指標」を組み合わせて、表やグラフを作成していくのが基本です(GA4では「自由形式」と表現されています)。
その中での特徴的な変化は、カスタムレポートでは明示的に用意されていなかった「セグメント(の比較)」機能が用意されている点です。
この機能は、UAでもデフォルト画面で用意されていましたので、皆さま存在はご存知かと思いますが、データ探索には、非常に強力な武器となる機能です。
さらに、GA4では「自由形式」に加えて、現時点で、6つの特別なデータ探索手法(&ビジュアライゼーション)が用意されています。
「自由形式」に関しては、UAでカスタムレポートを活用されていれば、見慣れたレポート表現で、それほど戸惑いもないかと思われますので、今回は、その特別な探索手法に関して、いくつかをピックアップして考察してみます。
(なお、これら特別な手法は、「自由形式」では、そのデータ表現が難しく、かつ、ユーザーベースの行動分析のために、効果的なものとして用意されたものと思われます。)
4. 「ユーザーのライフタイム」
最初は、「ユーザーのライフタイム」です。
この探索手法は、ユーザーベースの分析にとって最も重視すべき指標が「個々の売上(コンバージョン)」ではなく、「LTV(ユーザー生涯価値)」という観点において、最も活用が期待されている探索手法ではないか?と認識しております。
表現手法としては、次のイメージのとおり、各ディメンションごとに(設定期間内の)LTV関連指標の「合計」「平均」などを表形式で表現するものです。
この活用に向けては、(上のイメージでも設定しておりませんが...)eコマースサイトに限らず、それぞれの目標に適切な「Value(通貨価値)」を設定しておくことがポイントかと思われます。
※ただし、私が試した限りでは、指標として「コンバージョン(合計/平均)」を設定することができなかったため、「トランザクション」として認識されるようイベント設定時の考慮が必要かも知れません。
5. 「コホートデータ探索」
「コホートデータ探索」は、ユーザーの維持率を測定するための表現手法です。
次のイメージのとおり、最左列にユーザーの利用開始時点を配し、週(月/日)ごとのユーザーの定着割合を表現するものです。
設定に必要な項目(選択肢)も多くなく、ビジュアルも分かりやすいため、使い勝手の良いデータ表現ではないかと思います。
ただし、現状、探索期間のMAX値が、当日起点で60日*(...と思われる)ため、訪問頻度の低いWebサイトでの活用は厳しいレポートとなっています。(その他、クロスデバイスに対応したデータにもなっていないようです。)
今後、もう少し中長期のデータ計測への対応と展開を期待したいところです。
*[補足追記]「管理」メニューで、デフォルトの「データ保持」期間を2月→14月に変更することで、期間を延長できます。
6. 「セグメントの重複」
「セグメントの重複」は、GA4のクロスデバイス&クロスプラットフォームの一元的計測のデータ思想がまさに活きる探索手法です。
ユーザー単位で様々なセグメント(デバイス、メディアetc)の重なり≒利用動向を把握することができます。
なお、一つのレポートでは、セグメントの設定が3つまでという制限がありますので、多数のセグメントの重なりを把握したいような場合には、複数レポートの作成等の工夫が必要です。
7. 「経路データ探索」
最後に、取り上げるのは「経路データ探索」です。
こちらの表現は、UAの「行動フロー」として、おなじみのビジュアル表現かと思います。
UAでは、主に画面遷移を把握する手法でしたが...GA4では、データ計測単位が(PVも含めて)すべて「イベント」単位となったため、カスタムイベントの設定次第で、ユーザーのより詳細な行動遷移を把握することへの応用が可能となっています。
(当社でも、今後、いろいろとイベント設定を試しながら利用していければ、と考えております。)
GA4には、上記以外の特別な探索手法として、個々のユーザー動向を確認する「ユーザーエクスプローラ」と、そして、より自由度が増した「目標到達プロセス」が用意されています。
今回は、コラムが長くなってしまったこともありますので...当社としても、GA4のさらなる理解&活用に取り組みつつ...前回コラムで紹介した「Googleデータポータル」でのレポーティングとの使い分けも研究しながら...また、機会がありましたら、さらなる考察(続き)などを書いてみたいと思います。
関連コラム
[GA4解説]Looker Studio(旧:データポータル)連携とその制約
[GA4実践]Web解析レポートの指標・ディメンション・セグメントなど
Googleデータポータルによるデータビジュアライゼーション例
[参考]ペット(犬猫)アプリ連動データビジュアライゼーション
アプリユーザーの皆さまの登録情報を愉しく“魅せる”ことに特化したデータビジュアライゼーションWebコンテンツです。
* Web解析/GA4とは、特段関係ありません。