Business&Marketing Column
SDGs
ランキング
企業ブランド
2022.09.25
2015年9月25日に、国連サミットで“SDGs”を中心テーマとする「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されてから、本日で7年が経過しました。
“2030年”を目標年とするSDGsの取り組みに対して、これでおよそ半分近くの期間が経過したことになります。
そこで、今回は、これまで各企業が取り組んできたSDGsへの取り組み成果が、企業ブランドの評価に影響を及ぼしている可能性があるのか?「企業版SDGs調査」「Best Japan Brands」2つの調査/評価(ランキング)を用いて、その可能性を探ってみることとします。
1. 「企業版SDGs調査」と「Best Japan Brands」
最初に2つの調査/評価について簡単に説明をしておきます。
「企業版SDGs調査」は、(株)ブランド総合研究所が、2020年から毎年実施している調査で、企業が行っているSDGsの活動が一般消費者にどのくらい認知・理解され、評価されているのかを数値化しています。
第3回となる2022年版の調査結果は、9月9日に公開されています。
一方、「Best Japan Brands」は、世界最大のブランディングファームInterbrandの日本法人(株)インターブランドジャパンが、毎年実施しており、(ブランドの持つ価値を金額換算する独自のブランド価値評価手法を用いて)日本発のブランドを、グローバルのリーディングブランドと同じモノサシで評価し、ランキングとして発表しています。
2022年版のランキングは、2月24日に発表されています。
今回は、この2つの評価ランキングを比較することで、その可能性の有無に少しでも迫ってみることにしましょう。
2. SDGsランキングとブランド評価上位の比較
最初のグラフ①は、「企業版SDGs調査2022」の“上位25社(ブランド)”のうち、日本発のブランドではない「スターバックス」「日本マクドナルド」2社を(「Best Japan Brands」での評価対象外のため)除外し、縦軸に「企業版SDGs調査2022」の順位、横軸に「Best Japan Brands 2022」で対応する企業ブランドの順位をプロットしたものです。
このグラフからは...過半数の企業(ブランド)について、両方の調査/評価の順位が、概ね比例した位置にプロットされていることが見てとれます。
このことは、各企業のSDGsへの取り組み自体が、実際に企業ブランドの評価に影響していることを示唆しているものなのでしょうか?
3. 「企業版SDGs調査」評価ランキングの順位推移
そのことを探るため、続いて「企業版SDGs調査」の“2020-2022年(3年間)”の順位の推移を確認してみることにします。
なお、このグラフ②では、両方の調査/評価にランクインしている“10社”をピックアップしています。
このグラフでは、(まだ調査自体の歴史が浅いこともあってか...?)比較的順位の変動が大きいことが見てとれ、特に、2021年では「日産自動車」「セブン-イレブン」「無印良品」が、(それぞれ「107位」「75位」「32位」と)大きく順位をランクアップさせている様子が読み取れます。
他にも「ヤクルト」が、2021年に大きくダウンさせた順位を、2022年に再度ばん回していることが分かります。
では、「Best Japan Brands」の評価の方は、どのような推移になっているでしょうか?
4. 「Best Japan Brands」Rankingsの順位推移
グラフ③が、「Best Japan Brands」の、同じく“2020-2022年”の順位の推移になります。
こちらのグラフでは、各企業ブランドとも、比較的安定した推移を見せていることからして...前述のグラフ②と大きく異なる推移をしています。
特に、グラフ②で変化の大きかった「日産自動車」「セブン-イレブン」「無印良品」なども、(2021年のSDGs調査の後となる)2022年版でも、それに比例するような大きな変化は確認できません。
なお、この評価では、「ブランド価値($)」の“前年比”も発表されていますので、そちらの推移も参考に掲載しておきます。
2021→2022年にかけての前年比は、「日産自動車」「無印良品」が、グラフ②同様に(それぞれ「△8%→5%」「△11%→0%」と)上昇の変化を見せていますが...これのみで、グラフ②の大きな順位変化を説明できると言えるか?は、(「セブン-イレブン」などは異なる推移を見せており)かなり厳しいものと思われます。
5. 企業のSDGsへの取り組み→企業ブランドへの影響
ここまでの(2つの調査/評価の比較の)結論からは...各企業が取り組んできたSDGsへの取り組み成果が、企業ブランドの評価に影響を及ぼしている可能性は、現時点では、あまりなさそう。と言えるのではないかと思います。
最初のグラフ①で、一見、比例している企業(ブランド)が多いように見えた点は...「企業版SDGs調査」が一般消費者を対象としているため、おそらく、元々ブランド力がある企業の取り組みは、SDGsに関しても“認知されやすかった”ということが実情ではないでしょうか?
この点は、企業側への調査などを元に算出されている東洋経済新報社の「2022年版 SDGs企業ランキング」では、全く異なる評価と順位になっている点からも推察できると思います。
ちなみに、グラフ②で“右端に”位置する企業群は、比較的ドメスティックなブランドが多く見受けられ...“国内消費者”の評価と「Best Japan Brands」における評価に差があることが予測されます。
一方で、グラフ②で“左下方に”位置する企業は、企業ブランドの評価そのものに比較して、SDGsへの取り組みを“国内消費者”があまり評価していない(≒認知していない)可能性がありますので...最後に、その代表として「ソニー」「本田技研工業(ホンダ)」を取り上げて、その要因を考えてみたいと思います。
6. 「ソニー」のSDGsへの取り組み(グループサイトから)
<ソニークループサイト - サステナビリティ ->
ソニーグループのWebサイト(ポータルサイト)を確認してみると...SDGsへの取り組みに関する言及がほとんどありません。この点は、他社と明確に一線を画しています。
もちろん、SDGsに代表されるサステナビリティに関する取り組みに消極的な訳ではなく、Webサイト上でも、この点への言及は当然のごとくありますので、企業ブランディングと、SDGsという“キーワード”(ある意味“バズワード”)を結び付けることを、意図して(戦略的に...?)避けているように考えられます。
このことが、SDGs調査の評価ランキングの結果に結びついている可能性は、おおいに考えられると思います。
7. 「ホンダ」のSDGsへの取り組み(企業サイトから)
<ホンダ企業サイト - Honda with SDGs ->
一方、ホンダの企業サイトには、SDGsの取り組み紹介ページが独立して存在します。
企業ブランディングに、SDGsへの取り組みも活かしていこうという意図は感じられますので...順位の乖離に、この点の戦略的意図は関係なさそうです。
ホンダに関しては...おそらくにはなりますが...海外売上比率が85%を超えていることもあり、ブランディングの重点を、国内ではなく、海外に移していることが、要因の一つとして考えられるものと思われます。