Business&Marketing Column
SDGs
脱炭素
特許技術
2021.12.15
先週は、ほぼ2年ぶりに東京に行き、「新価値創造展2021」「SDGs Week EXPO『エコプロ2021』」と久しぶりのリアル展示会をハシゴしてきました。
「新価値創造展」は、日本らしく?製造技術的な出展が多く、また聴講したソラコムさんのDXについてのステージも製造業の課題を主眼とした講演内容でしたので、正直、当社のようなサービス系企業が直接すぐに参考にできる内容は少なかった印象です。(もちろん、将来的、間接的に参考になりそうなものは、いくつかありましたよ♪)
もう一つの「エコプロ展」に関しては、オンライン開催の2020年から「SDGs Week」と銘打っているように...プロダクト(製品)展示というよりも、自社の様々な“環境(エコ)への取り組み”を知ってもらおう。という啓蒙・PR的な展示会に変わってきているようです。
実際に、来展者も、小学生~大学生まで幅広く、学生の皆さんが多くを占めていた印象ですので、特に、SDGsや社会・環境への意識の高い若年世代への企業認知促進、企業ブランド向上を目的として出展されていた企業が多かったように思います。
ちなみに、その出展趣旨に応じてか?大企業を中心に『(学習的内容の)クイズラリー』的な手法が多くのブースで用いられていたのが、印象的でした。
さて、前置きが長くなりましたが...
本日のコラムでは、いつもどおりちょっとしたデータを用いて「エコプロ2021」の出展分野と、この展示会にちなんで、環境(脱炭素・SDGs)関連技術の基礎となる特許をどのような企業が保有しているのか?について見ていきたいと思います。
1. 「エコプロ2021」出展分野ランキング
次のグラフが「SDGs Week EXPO」展示会サイトで、出展内容を「出展分野」別に検索した結果です。
このグラフからは、展示会の主題である「SDGs」「環境配慮・エコ活動」の分野が突出して多くなっているのは当然として...その中でも「温暖化防止」「廃棄物処理・リサイクル」などが展示テーマとして多かったことが分かります。
社会的関心と自社の取り組みを照らし合わせて、この分野に関する取り組みをもっと知ってもらいたい!という企業が多かった。ということを示しているものだと思います。
また、続いて目につくのが「教育・学習支援(5番目)」「行政・自治体・関連団体(6番目)」「研究・学術成果発表(10番目)」など公的・教育関連の分野でしょうか...
この点は、出展展示内容も来展者層に呼応しており、この展示会の主題&傾向をよく現わしているものと思われます。
ちなみに、このグラフにも現れているように、やはりプロダクト(製品)自体の展示は少ない印象でした。(実際の展示会の印象はブースの規模などにも左右されますので、このとおりのイメージとは多少異なりますが...)
2. 脱炭素関連特許の企業ランキング
さて、ここから話をガラリと変えますが...
エコプロ展の出展分野数でもかなり上位だった「温暖化防止」。その発展を支える各企業の技術競争力について...ちょっと角度を変えて、特許視点でデータを見てみたいと思います。
まずは、CO2排出削減の観点から温暖化防止と直結していると思われる「脱炭素」関連技術特許に関してです。
この関連特許に関しては、「脱炭素技術の関連特許=カバーする技術範囲・産業分野が広く、特定の分類コードも付与されていない」ことから直接特定するデータは存在しないため...「知財AI研究センター(Japio)」が、【人工知能(AI)】を用いて関連特許を判定する野心的な取り組みをされていますので、そのデータを用いて確認してみることとします。
次の表が、その「脱炭素関連特許 企業ランキング(日本特許庁2019年出願)」です。
ここでは「トヨタ自動車」が他を圧倒するスコアを記録している他、業種別では「輸送用機器」の企業が上位20社のうち9社と半数に迫る数を記録しています。
やはり、多くのCO2排出量割合を占める「運輸部門(自動車等)」に関わる企業群は、パリ協定(2015年)以後の世界的な脱炭素化の潮流も踏まえつつ、かなり以前より関連技術の開発を活発化&特許を取得し、時代の変化に備えていた様子がうかがえます。
そのほか「輸送用機器」以外の業種では、「電気機器」の企業が同じく9社を占めており、こちらは「東芝」や「日立製作所」など、エネルギーインフラに直接関わる企業が多いことなども、このようなランキングの結果に影響しているのでは?と推察されます。
3. SDGs関連特許の企業ランキング
Japioでは、同じく関連特許技術のAI推定の手法を用いて、SDGsの各目標に対する保有特許視点での企業ランキングを掲載していますので...
最後に、「温暖化防止」と関連するSDGs目標【7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに】【13 気候変動に具体的な対策を】に関するランキングを、見ておきたいと思います。
【7】
この項目でも「トヨタ自動車」がTOPなのは、脱炭素関連と同様ですが、業種では「電気機器」が上位20社のうち13社を占め最も多くなっています。
この点は、「電気機器」の企業の中に、いわゆる半導体関連と言われる企業も多くランクインしている印象ですので、そのあたりの関連技術特許も多く含まれているのかも知れません。(特許技術は専門外ですので、確実なことは分かりませんが...)
【13】
こちらでも「トヨタ自動車」が不動のTOPなのは変わらずです。また「輸送用機器」の企業が7社入っている点は、【7】のランキングより脱炭素関連に近しい結果になっています。
一方で、「化学」業種が7社入っている点は大きく異なっており、より石油由来製品の技術革新に資する特許などが評価されている結果なのかも知れません。
今回は、日本特許庁への出願状況(≒日本企業中心)のランキングでしたが、JapioではPCT国際特許出願状況からもAI推定を行っていますので、ご興味があれば、ぜひそちらのデータも確認してみてください。