Business&Marketing Column
インバウンド
検索ワード
マーケット・トレンド
2023.06.05
今回のコラムも、引き続き「インバウンド消費」がテーマです。
前回は、「訪日外客数」や「訪日外国人消費動向調査」などいくつかの統計データをもとに、主要各国(地域)ごとの動向を確認してみましたが...今回は、ピンポイントに【Googleトレンド】を用いて、キーワード『日本旅行(⇒ 相当する現地の言葉)』の検索ボリュームの推移から、今後の訪日客の推移動向を探ってみることにします。
なお、『日本旅行に相当する言葉』は、Google翻訳に頼っていますので、悪しからずご了承ください。m(__)m
1. [韓国][台湾]検索ワード「日本旅行」(→インバウンド関心)推移
最初は、インバウンド客数の最も多い東アジアを代表して「韓国」「台湾」のデータを取り上げます。
下のグラフは、Googleトレンドによる各国・地域ごとの『日本旅行』の検索ボリュームの推移を、【2019年(コロナ禍前)/2021年(コロナ禍中)/2023年(コロナ禍明け)】で比較したものです。
なお、検索ボリュームの比較対象として、外国人旅行客数No.1の国『フランス(キーワード「フランス旅行」)』を併記しています。(以下のグラフすべて同じ)
2023年(第20週まで)の推移は、「韓国」「台湾」とも、コロナ禍前の2019年を上回っています。
一方で、コロナ禍前後の検索ボリュームの差に違いが見受けられ、「韓国」が概ね1.5~2倍程度とかなり大きくなっているのに対し、「台湾」は0~+20%前後と比較的小さくなっています。
このデータからは、その要因までは分かりませんが...
コロナ明け後の『日本旅行』への関心に、国・地域ごとの温度差があることは明確で、その関心の差が、今後 “実際のインバウンド客数” の動向に影響してくる可能性も相応にあると推察できます。
そういう意味で、例えば、上のグラフからは「台湾」からの客数の回復に、(『日本旅行』への関心とともに)より注視が必要と言えるかもしれません。
ちなみに、「韓国」「台湾」とも、『フランス旅行』の検索ボリュームは、コロナ禍前~明けを通じて『日本旅行』よりかなり低く、“遠さ”という地理的要因が、関心にも現れているものと思われます。
2. [タイ][ベトナム]検索ワード「日本旅行」(→インバウンド関心)推移
次に取り上げるのは、東南アジア諸国の中で訪日客数の最も多い「タイ」と、今年、既にコロナ前を上回っている「ベトナム」のデータです。
「タイ」では、このキーワードの検索ボリュームが、(コロナ渦中からは大幅に回復しているものの...)いまだコロナ前の水準を回復していません。
また、「ベトナム」でも、その水準は概ね2019年ラインかやや増加程度にとどまっています。
一方、ベトナムで端的なのは、2023年に入り『フランス旅行』の検索ボリュームが急増し、直近は『日本旅行』を大きく上回る推移を示している状況です。
全般的に、インバウンド客数の戻りが速い東南アジア諸国(前回コラム参照)ですが...その中でも、「タイ」は相対的に戻りが鈍く、人々の関心が[他の国・地域への旅行]や[旅行以外の消費]に向いている可能性も考えられる状況です。
そして、既にコロナ前を超えている「ベトナム」でも、日本より、旧宗主国で文化的つながりも深い『フランス旅行』への関心が示唆されており...今後も日本が継続的に、そして、これまで以上に訪日客を迎えることができるか?...予断を許さない状況になっているのかもしれません。
3. [アメリカ][カナダ]検索ワード「日本旅行」(→インバウンド関心)推移
続いては、アジア圏以外で最も訪日客数の多い「アメリカ」と、同じ北米の「カナダ」です。
「アメリカ」「カナダ」とも、2023年は、2019年を大きく上回って推移しています。
また、今年に限定すれば、比較対象の『フランス旅行』に対しても、(一部週を除き)概ね1.5~2倍程度上回っている状況です。
ただし、その『フランス旅行』のボリュームは、(日本ではコロナ渦中の)2021年4月頃から一度大きな上昇を描いており、需要自体、現在は既に一巡した後とも考えられる推移になっています。
実際、欧米各国は、日本より一足も二足も早く経済活動再開(リオープン)に動いていたため...ようやく自由に訪問できるようになったばかりの日本への関心は “今がピーク?” ということも...考えられなくはない状況です。
例えば、「カナダ」直近の第19-20週は、ボリュームが減少し、コロナ前との差も縮まっているようにも見受けられます。(今後次第で、この2週は偶然かもしれませんが...)
アメリカを中心とする北米も、インバウンド客数が多い重要な地域である分、その関心動向には注視が必要でしょう。
4. [イギリス][ドイツ]検索ワード「日本旅行」(→インバウンド関心)推移
最後に、ヨーロッパの大国「イギリス」「ドイツ」を取り上げます。
「イギリス」は、2021年『フランス旅行』のボリュームが極端に多く、グラフからは『日本旅行』の動向が正確に読み取れませんが...コロナ前比で、やや増加傾向のイメージです。
他方、「ドイツ」も同様に、今年は、2019年比でやや増加した推移が確認でき、さらに、こちらは『フランス旅行』を上回って推移しています。
(ちなみに、『フランス旅行』の推移は、2021年に既に一度ピークを迎える形で、この点は、前述「アメリカ」「カナダ」と同様の傾向です。)
両国とも、コロナ前比で『日本旅行』への関心はやや高まっていると考えられますが、その比較水準はそこまで高くなく、今後の推移次第の面も大きいように思われます。
特に、ドイツの『フランス旅行』との対比に関しては、隣国で出入国手続きもないEU圏。(このキーワード自体の需要は高くないと推定され...)あくまで参考程度に捉えておいた方が良いでしょう。
ココまで見てきた、Googleトレンドによる『日本旅行』の検索トレンドは、(「タイ」を除き...)各国とも概ね、コロナ禍前の水準か、それ以上の水準に達していますので、日本のインバウンド客数は、ある程度の期間、堅調さを維持するものと考えられます。
...しかし、各国の状況をつぶさに見ると...次の成長に向けては、そこまで安閑としていられる状況でもないと思われます。
観光立国を目指す国(地域)も多数ある中、“待ち” の姿勢だけでは、結局、(ココ数十年の日本経済の現状同様...)国際競争に敗れることになりかねません。
ターゲットとなる各国・地域の趣味・嗜好をキチンと理解し、日本の新たな魅力を “その国(地域)に適した形” で最大限伝える努力が不可欠のステージに入りつつあると感じています。
関連コラム
[インバウンド]訪日外客数などデータを基に考えるターゲット戦略(国・地域)
お菓子の日の甘~いお菓子のそんなに甘くはない⁉マーケットのお話
その他検索トレンド関連コラム
\postコロナ/キーワードの検索需要に映るビジネス環境の変化