Survey Reports

若手~中堅正社員の離職予備軍は半数近くに迫る。約1/4は具体的な検討を始めるなど高い転職意向。

人手不足時代の採用戦略を探る - 若手~中堅正社員の仕事の満足度等に関する調査 -

人手不足

採用

インターネット調査

2024.02.20

企業のマーケティング戦略立案・実行支援などを行うLifeTimeTechLabo Inc.では、“人手不足”が日本企業の最大の経営課題となりつつある中、より重要性を増す採用・HR戦略のヒントを探るため、若手~中堅世代(25歳~34歳)の正社員に対して、仕事の満足度などを聞くインターネット調査を実施いたしました。

調査結果サマリー

  • 現在の仕事の満足度を(11段階で)聞く設問では、不満方向の合計割合が「24.8%」、どちらでもないが「28.8%」、満足方向の合計が「46.5%」。満足が不満を2倍近く上回る。
  • 現在の仕事で満足している項目は、「ワークスタイル(勤務場所・時間、休日その他勤務条件など)(24.5%)」「福利厚生(23.3%)」「上司・部下とのコミュニケーション・人間関係(21.5%)」の順。
  • 逆に、現在の仕事で不満に思っている項目は、「賃金(給料、賞与など)(38.0%)」が他を圧倒。「業務量(18.3%)」「現在の人事評価・査定(18.0%)」などが続く。
  • 現在の就職にあたり重視した項目では、「賃金(30.5%)」「ワークスタイル(27.3%)」の他、「福利厚生(19.8%)」「企業(雇用)の安定性(18.5%)」などが高い。
  • 就職時の企業の情報収集手段では、「就職/転職情報サイト(43.3%)」の他、「企業の採用サイト(17.8%)」「会社の口コミ・評判サイト(16.3%)」などが上位。その他「採用面接のみ(15.3%)」も一定割合存在。
  • 現在の転職意向では、漠然と...含め「転職したいと考えている」「転職活動を始めている」との回答が「42.5%」と半数近くに。また、「24.3%」は具体的な検討を始めるなど高い転職意向を示す。

調査結果詳細

日本の若年人口の減少が加速し、日本企業にとって”人手不足”への対応が経営の最優先課題となっている中、人材獲得だけではなくその先の人材定着を見据えて、採用(HR)戦略のさらなる深化が求められる時代になっています。

今回の調査では、若手~中堅へと差しかかり、企業の次代を担う “大学卒業以上の25歳~34歳正社員” を対象に、これからの採用戦略、HR戦略のヒントを探るべく、仕事の満足度、満足している項目(不満に思っている項目)、就職にあたって重視した項目、企業の情報収集手段などを聞く質問を行いました。

本調査の最初の設問では、現在の仕事に対する満足度を「0(とても不満)~10(とても満足)」の11段階で評価してもらう質問を行いました。

現在の仕事の満足度評価

設問の結果は、「不満方向」を示す「0~4」の回答合計が「24.8%」、「どちらでもない」の「5」が「28.8%」、「満足方向」を示す「6~10」の合計が「46.5%」となりました。

満足方向の合計が、不満方向を2倍近く上回り、概して現在の仕事に満足している人が多い結果となっています。

ただし、満足方向の回答では、どちらでもないに近い「6、7」の合計が「28.5%」と高く、同程度の「どちらでもない」も合わせると、この3つの回答で、6割近くを占めています。

この点、「満足している」層が多数というよりは、「不満ではない」といったニュアンスの 消極的肯定派 が多数派と言える現況でないかと思われます。

次の設問では、項目を例示する形で、現在の仕事(職場)に関し「満足している項目」を選択してもらう質問を行っています。

(「満足している項目」をすべて、「最も満足している項目」を一つだけ選択)

現在の仕事(職場)で満足している項目

この設問の選択肢の平均選択数は「2.77」。(「特にない」は「0」にカウント)

回答では、選択が多かった順に「ワークスタイル(勤務場所・時間、休日その他勤務条件など)(24.5%)」「福利厚生(23.3%)」「上司・部下とのコミュニケーション・人間関係(21.5%)」「賃金(給料、賞与など)(20.5%)」「業務量(20.5%)」となっており、この5つの項目が20%を超える割合となっていました。

一方、項目を一つだけ選択する「最も満足度の高い項目」では、「特にない(16.3%)」が最も高く、それ以外では、「福利厚生(12.0%)」「ワークスタイル(11.5%)」の順に高くなっていました。

続いて、同じ項目を例示し、現在の仕事(職場)に関し「不満に思っている項目」を聞く質問を行っています。

(「不満に思っている項目」をすべて、「最も不満に思っている項目」を一つだけ選択)

現在の仕事(職場)で不満に思っている項目

この設問の平均選択数は「2.35」。(「特にない」は「0」にカウント)

具体的な項目では、「賃金(給料、賞与など)」が「38.0%」と突出して高く、2位以下にダブルスコア以上の大差をつけています。

続いて「業務量(18.3%)」「現在の人事評価・査定(18.0%)」「福利厚生(16.0%)」「上司・部下とのコミュニケーション・人間関係(15.5%)」などとなっていました。

また、最も不満度の高い項目でも、「賃金(25.8%)」の割合が非常に高く、2番目も同じ「業務量(8.3%)」となっています。

上記2つの設問の結果は、例えば、最も満足度の高い項目で「特にない」が1位になる(→ 仕事の満足度評価における消極的肯定派の多さにつながる)など、満足度評価を、一定以上裏付ける結果になっているものと認識しています。

また、満足⇔不満両面で、「賃金」「ワークスタイル」など 基本的待遇や労働条件 に関わる項目、あるいは「上司・部下とのコミュニケーション・人間関係」など 人との関係性 に関する項目が高く出現し、これら特定の項目の満足度(あるいは不満度)が、仕事そのものの満足度評価を大きく左右しているものと捉えられます。

他方、「担当業務が成長・スキルアップにつながっているか?」「担当業務で充足感・達成感を得られているか?」など、いわゆる 個人のやりがい や、「企業理念・ミッション、パーパス」など 会社組織の意義・目的 などに関わる項目は、どちらも割合が低く、仕事の満足度にあまり寄与していない可能性が考えられます。

最後に、不満方向への「賃金」の突出度に関しては、インフレ下で 実質賃金のマイナス が続く、現在の日本の社会・経済情勢の影響を強く受けている可能性も推察されます。(→ ここ2年程度で、より不満割合が高まっている可能性)

このように「賃金」への強い不満が示される環境下で、さらに企業(あるいは業種)間の賃金格差が進むようであれば...賃上げ余力のない企業(業種)の存続は、想像以上に早く危機的な状況に向かうことも大いに考えられる結果となっていました。

次の設問からは、就職時に関する質問を行っています。

その1問目では、現在の企業(職場)に就職を決めるにあたり「重視した項目」を聞く質問を、項目を例示して行いました。

(「重視した項目」をすべて、「最も重視した項目」を一つだけ選択)

現在の企業(職場)に就職を決めるにあたり、重視した項目

この設問の平均選択数は「2.40」。(「あてはまるものはない」は「0」にカウント)

回答割合では、「賃金(給料、賞与など)(30.5%)」「ワークスタイル(勤務場所・時間、休日その他勤務条件など)(27.3%)」の2つが高く、次に「福利厚生(19.8%)」「企業(雇用)の安定性(18.5%)」、続いて「仕事内容が希望とマッチしているか?(15.8%)」「仕事内容に充足感・達成感を得られそうか?(13.3%)」「仕事内容が成長・スキルアップにつながりそうか?(13.0%)」などとなっています。

最も重視した項目でも、「賃金(15.5%)」「ワークスタイル(15.0%)」の次に「仕事内容が希望とマッチしているか?(8.8%)」が位置しています。(「あてはまるものはない(11.8%)」を除いた場合)。

仕事の満足(不満)項目の設問と「賃金」「ワークスタイル」など 基本的待遇や労働条件 が高く現れている点は共通です。

一方で、就職時の重視項目では、「仕事内容が希望とマッチしているか?」など、 個人のやりがい 関連が、比較的高く現れていることが特徴となっています。

これらの項目は、満足(不満)項目の評価という点では、他項目との比較考量の中で顕在化しにくい可能性もありますが...少なくとも、就職前時点と就職後の仕事に対する意識(優先度合い)の変化を垣間見れるものとして、興味深い結果となっています。

この点、過度にやりがいに重点を置く企業選択や、仕事のやりがいを訴えるリクルート活動は、結局両者にとって幸せならない可能性も十分にあるのではないでしょうか。

次の設問では、現在の企業(職場)に就職するにあたり、どのような手段で、企業の情報収集を行ったか?を確認しています。

現在の企業(職場)に就職するにあたっての情報収集手段

この設問の平均選択数は「2.07」。(「採用面接のみ」は「0」にカウント)

「就職/転職情報サイト」が「43.3%」と2位以下を突き放して回答割合が高く、「企業の採用サイト(17.8%)」「会社の口コミ・評判サイト(16.3%)」「就職/転職エージェント(14.5%)」「企業の会社サイト(14.5%)」などが続く結果となっています。

一方で、「採用面接のみ」という回答も「15.3%」存在しています。

続いて、前問で選択した情報収集手段を対象に、現在の勤務実感に比べて、情報の信頼度が低かったと感じるものがあれば選択してもらう質問をしています。

現在の勤務実感と比べて、情報の信頼度が低かったと感じる情報収集手段

前問に対する選択割合では、「採用面接のみ」が「93.4%」と極端に高く、続いて「就職/転職情報サイト(62.4%)」「ハローワーク・職業相談所(61.3%)」「SNS(企業の運営するアカウント除く)(55.1%)」などが高くなっています。

これらの設問では、企業の情報収集手段として、最も利用されている「就職/転職情報サイト」の他、利用率が高いものでは、「就職/転職エージェント」や「会社の口コミ・評判サイト」など 第三者発信 の情報の信頼度があまり高くないことが示されています。

一方で、企業の一次情報 である「企業の採用サイト」「企業の会社サイト」「企業主催の説明会」などは、相対的に信頼度が高めという評価になっています。

入社前後のギャップの大きさが、(就職後の)仕事の満足度評価を低下させる可能性は大いに考えられ...就職時の企業の情報収集は、仕事の満足度を高めるためにも重要な要素と考えられます。

今回の調査では、企業の一次情報の中で、最も利用割合の高い「企業の採用サイト」でも20%未満となっており、人材の定着を促す採用戦略には、こうした一次情報に適切に触れる機会を創出することも、重要な施策となってくるのかもしれません。

最近も、X(旧twitter)の「採用面接で『なぜ弊社でなければならないのか』と聞くのは本当に止めたほうがいい」という投稿が話題になっていましたが...『当社のことを、どのような手段・情報源を用いて、何について調べたか?』のような質問で、客観的な意欲を探る方が、お互いに有意な面接となる可能性が示唆されています。

今回の調査では、最後の設問として、現在の転職意向を聞く質問を行っています。

現在の転職意向

「転職を考えたことはない」が「29.0%」と最も多く、「転職したいと思うことがたまにある(28.5%)」が僅差で続いている一方で、「漠然と転職したいと考えている(まだ具体的な検討はしていない)」を含め転職意向を示す回答の合計割合が「42.5%」を占めています。

さらに、「機会をみて転職したいと考えている(具体的な検討を始めている)」など、具体的な行動に直結する高い転職意向を持つ割合が「24.3%」を占めていました。

調査対象者の半数近くが転職意向を示し、さらに、約25%が高い転職意向を示すこの設問の結果は、現在の仕事への満足度(不満)次第で、次のキャリアパスにいつでも踏み出せる労働意識(労働環境)の変化を表しているとともに、企業にとっては、将来を担う人材の採用と定着に向けて、より細やかな戦略と対応が求められる状況を示唆しているものと考えられます。

なお、本調査レポートは、各設問の基本的な集計結果をとりまとめた内容となっております。
今回の調査では、現在の仕事の満足度評価を軸に、より結果を深堀した調査レポートも用意しておりますので、次のレポートもぜひご覧ください。

調査概要

若手~中堅正社員の仕事の満足度等に関する調査

調査方法 インターネット調査
調査期間 2024年1月22日 - 25日
調査対象者 全国25歳 - 34歳
[本調査]現在、企業に勤務/正社員/大学卒業以上
(アイブリッジ(株)「Freeasy提携パネル」利用)
有効回答数 [本調査]400サンプル
※性年代別に均等割付
設問数 [本調査]7問

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