Business&Marketing Column
菓子
マーケット・トレンド
インバウンド
2023.04.15
毎月15日は「お菓子の日」。
1911年に「帝国菓子飴大品評会」として始まった「全国菓子大博覧会」の第1回が4月15日を中心に行われていたことに由来しているようです。
ということで、4月15日の本日は、疲れた脳の栄養源。甘~いお菓子のそんなに甘くはない⁉マーケット・トレンドに関するお話をお届けします。
1. 売れているお菓子はどんな種類? - 菓子データ -
最初は、毎年、全日本菓子協会が生産数量・金額、小売金額のデータをまとめている「菓子データ」から、品目別の小売金額に関するお話です。
3月31日に公表された最新2022年のデータによると、「チョコレート」が品目別シェアNo.1です。これは皆さんの想像どおりではないでしょうか?
それに「スナック菓子」「和生菓子」、「洋生菓子」「ビスケット」が続く構図です。
...個人的にはちょっと意外でしたが、「和生菓子」の金額シェアは、「洋生菓子」を上回っているんですね。
続いて、この品目別の10年間の推移を見てみると...
人口の減少が続く中でも、菓子全体(合計)の小売金額は、小幅増加(8%の増加)と堅調な売上を維持しています。
中でも、「チョコレート」は、この10年で30%近く増加するなど、継続して売上を伸ばしていることが分かります。
...最近は、見た目、機能性、サスティナブル配慮など、個性を際立たせた商品群が、定番商品とともに市場をけん引しているようです。
一方、このグラフでひときわ際立つのが「チューインガム」。ニュースでも話題になっていましたが...減少傾向が顕著で、もうすぐ10年前の半分に迫る水準です。
この点は、コロナ禍(2020-2021年)に需要が減少した「せんべい」「和生菓子」「洋生菓子」などが、2022年に回復を示しているのと比べても、対照的な様相です。
...“捨てる”ことがネックで「グミ」など他の商品に代替されてしまっているようですが、このまま衰退の一途をたどってしまうのか? チューインガムに慣れ親しんだ世代としては、今後の行く末が気になります。
2. お菓子が食費に占める割合は? - 家計調査 -
続いては、総務省が行っている「家計調査」のデータを元に、食料支出に占める「菓子類」の割合を見てみましょう。
これも、最新となる2022年のデータでは...
「菓子類」は、「調理食品」「外食」「野菜・海藻」「肉類」に続く5番目の支出項目になっています。
...既に、主食となる「穀物」などより家計支出は多くなっているようですね。
前項同様に、その年ごとの推移を確認すると...
食料(全体)は、7%程度の微増と言ったところですが、「菓子類」は30%近く増加し、「調理食品」に次ぐ伸びを見せています。
...家計では、お菓子消費が、前項以上に大きな意味を持つものとなっているようです。昨年来の物価高が家計を直撃する中、今後も引き続き、この勢いを保てるのか? 要注目です。
なお、このグラフでは、2020年に一時的に持ち直した「魚介類」「穀類」「野菜・海藻」が再度減少を示し、増加基調の「調理食品」「菓子類」「飲料」などと二極化がより一層進んでいるようです。
...ちなみに、穀類などは、近年の“低糖質・高タンパク”ブームの影響も大きそうですが、それとは別に、分類上「調理食品」として消費されているものも一定以上ありそうです。
3. お菓子を買うのはどの国の旅行客? - 訪日外国人消費動向調査 -
最後は、観光庁が毎年発表している「訪日外国人消費動向調査」から、インバウンド(訪日)客の買い物代に対する「菓子類」の割合です。
年後半からインバウンド客も徐々に戻り始めた2022年の年次報告書によると...
[全国籍・地域]では、「菓子類」の購入率は65%近くで、それに続く「その他食料品・飲料・たばこ」「衣類」「酒類」などの項目を大きく引き離しています。
...価格帯が“お手頃”でお土産にしやすい。ということもモチロン大きな要因ですが...WBCで訪日中の記者もたびたびお菓子を話題にしていたように“日本ならではのテイスト”や“バリエーションの豊富さ”に魅了されるファンが多くなっているのも一因と思われます。
これを(旅行消費額の約55%を占める)上位5ヶ国・地域別で見ると、[韓国][台湾][中国]など東アジアの国・地域では、総じて購入率が高くなっている一方、[米国]は全体平均より20ポイントほど購入率が低く、国・地域によっても大きな差があるようです。
併せて、一人当たりの購入者単価(金額)の方を確認してみると...
[全国籍・地域]では、12,000円弱。最も高い[中国]で18,000円弱、最も低い[韓国]で8,000円強となっています。
...買い物代では突出している中国ですが、お菓子が、云万円といった単位の爆買いの対象となることはないようです。
ちなみに、買い物代全体に対する金額割合では、買い物代の多い国・地域ほど菓子類の占める割合は低く、([米国]を含めて)どの国・地域でもお菓子にかけるお金は、一定範囲に収まる傾向があることが確認できます。
...ということは、インバウンドのお菓子マーケットの規模は、国・地域によらず、ザックリ“(訪日)客数”次第と捉えてよさそうで...インバウンドのさらなる回復とともに、今後も期待が高まりますね。
以上、本日取り上げた3つの調査データからは、(一部「チューインガム」などの商品を除いて)国内お菓子市場のここまで堅調な推移が際立つ結果になっていました。
ただし、その商品の特性上...
○ 急速に進む年少(15歳未満)人口の減少
○ 物価高などによるエンゲル係数の上昇
の影響が他の食品より直接的に効いてくる可能性もあり、決して、その先行きを楽観できるものではないように感じます。
今後もこのままの持続的成長を遂げるには、<...例え、中小のお菓子メーカーであっても...>インバウンドをトリガーに、マーケットをグローバルに拡げる!というような発想が必要なタイミングとなっているのかもしれません。