Business&Marketing Column

グローバルTOP企業と日本企業の存続年数(サステナビリティ)

Fortune500

100年企業

サステナビリティ

2020.10.15

前回は、「Fortune Global 500」のリストを元に、グローバルに総収益(売上)をあげているTOP企業の業種、国別の動向などを見てきましたが、今回は、引き続き同じリストを元に、それらのTOP企業がどの程度の期間存続しているのか?逆に、どの程度新陳代謝が起きているのか?について、企業の持続可能性(サステナビリティ)を探るヒントとして確認してみたいと思います。

1. グローバルTOP(総収益上位)企業の存続年数

Fortune Global 500の上位25位までのうち、前身会社も含め設立から100年以上の歴史を誇っている企業は、私の調べた限り6社のみです。

そのうち、3社(「ロイヤル・ダッチ・シェル」「BP」「エクソンモービル」)がいわゆる石油メジャーと言われる企業です。強力な権益を保有するエネルギー関連の企業は、現在までは、グローバルに息の長いプレゼンスを占めることができていたことが分かります。

一方、設立後50年未満の比較的若いといえる企業は、11社と半分近くの割合を占めています。やはり、企業も持続的にグローバルにTOPポジションを維持するのは難しく、一定以上の新陳代謝が起きていることが分かります。

さらに、これら11社を国別にみてみると、中国が6社、アメリカが4社と、この2か国で実に90%以上を占めており、その国の経済発展が、企業の新陳代謝とともに起きていることが強く示唆されているほか、中国企業の躍進が如実に現れています。
また、この11社を業種別にみると、テック系・ヘルスケア系の業種が多い印象も受けますが、比較的多岐にわたっています。特に、中国の企業は、従来型産業に属しているものが多く、まさに国自体の急速な経済成長と歩調をあわせて、世界でもトップポジションを占めるようになってきているものと認識されます。

2. 日本のTOP企業の存続年数

存続年数を、日本のTOP企業に限定して確認すると、その風景は大きく変わります。

設立から100年以上を数える企業も8社と多くなりますが、それ以上に、50年未満の企業が、もともと国営であった「日本郵政」を除くと、実質「ソフトバンク」の1社しかありません。

日本においても、ベンチャーブームなど創業の機運が高まる機会は何度もありましたが...残念ながら、ここ50年で、グローバルな観点で次代を担う規模まで成長した企業がほとんどないことを示しています。

もちろん、日本でも「キーエンス」や「日本電産」のように、50年弱で大きく飛躍した企業はありますが、それでも、Fortune Global 500にはランクインしていませんし、設立からの年数も、もうすぐ50年に届く時期にきてしまっています。

3. 世界の創業100年企業

ここで少し違う角度のデータとして、「日経BPコンサルティング・周年事業ラボ」の創業年数が100年以上の世界の企業を国別に調査したデータを確認してみたいと思います。

これを見ると、創業100年以上の世界の企業のうち、日本が40%以上を占める結果となっており、企業の規模を問わず、日本の企業の存続年数は突出した結果となっています。 このような結果になった要因は様々あると思いますが、戦後75年にわたる日本を取り巻く社会・経済環境の安定そのものが、日本の各企業のサステナビリティ(持続可能性)に、”今まで”は大きく寄与していたものと推定されます。

ただし、新型コロナ感染症の直撃により、世界全体の社会・経済の不安定さが大きく増大した2020年。そしてそれ以後の次代は、ここ50年、グローバルTOPに育った企業がほとんどない新陳代謝の少なさ(⇔企業の持続的存続)が、逆に、日本の社会・経済、そして環境の不安定さを加速する要因になりうることは十二分に考えられることです。

4. インターネットTOP企業の存続年数

最後に、前回と同じく「インターネット業種」をながめておきましょう。

ここでは、一番長い「Amazon.com」ですら、設立から26年です。それ以外の企業は、25年も経過していないことになります。

この点、業界自体が新しいので、当たり前と言えば当たり前かもしれませんが...世界では、この期間にこの規模まで成長しうるということを示していますし、逆に、この期間に淘汰を迫られた企業も数えきれないほどあるということです。 インターネットやデジタルの業界では、事業にこのスピード感が求められるとも言えるでしょう。