Business&Marketing Column

Global 100 Indexに見るサスティナビリティで評価される企業とその成長性

Global100Index

サスティナビリティ

SDGs

2021.03.15

前回に続き今回も、企業のサスティナビリティの話題を続けます。

サステナビリティ(持続可能性)の観点で企業を評価するランキングとして、毎年カナダのCorporate Knights社が発表する「Global 100 index of the 100 Most Sustainable Corporations in the World(以下「Global 100 Index」)」があります。
このランキングは、売上高10億US$以上の世界の大企業を対象(2021年:8,080社)とし、「情報開示・財務状況・製品業種ごと」のスクリーニングを経たうえで、「エネルギー生産性」「温室効果ガス排出性」などの環境に関する指標、「CEOの報酬と従業員の平均報酬の比率」「男性以外の執行役・取締役の割合」などのガバナンスに関する指標、「イノベーション投資割合」「クリーン投資割合」などの財務・投資に関する指標など24の指標*を元に各業種の企業を評価し、毎年、世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)で「世界で最も持続可能な企業100社」として発表*されるものです。
*2021年の評価指標です。評価指標は、評価年によって変更されることがあります。
*2021年はダボス会議開催が延期されたため、オンラインイベントでの発表でした。

今回は、このGlobal 100 Indexのリストから、どのような企業が持続可能性の高さで評価されているのか?そして、その企業の実際の成長性はどうなのか?を確認してみたいと思います。

1. Global 100 Index 2021上位の企業

最初に「Global 100 index」の2021年版で上位(25位まで)にランクインした企業を国・地域別で確認してみます。
国・地域別では、半数以上が「ヨーロッパ」の企業で占められており、その中でも「北欧」に属する企業がさらにその半数を占めているのが目につきます。

Global 100 Index 2021 上位企業

この点、昨年9月のコラムで取り上げた総収益(売上)上位のランキング「Fortune Global 500」のリストが、アメリカ・中国の企業で過半を占められているのとは、風景が一変しており、やはり市民の環境意識、権利意識が高い各国の企業が上位を占める傾向にあるようです。
(リスト全体を見ても、年により多少バラツキはあるもののヨーロッパの企業が全体の45~60%の割合を占めています。)

Global 100 Index 2021 国・地域別推移

このリストの違いから...社会・環境の持続可能性の前に...実際の企業そのものの持続可能性としては、現在稼ぐ力が強い企業が、結局今後も生き残っていくのか?もしくは、サスティナビリティでの評価が高い企業が今後も事業を安定的に成長させていくのか?リストに掲載された各企業の今後の業績推移を楽しみにしてみたいと思います。

なお、リスト上位企業の業種に関しては、Global 100 indexのリストがセクター(業界・業種)割当を行って算出されていることもあり、何か特定の業種に偏っている傾向にはありませんが、現時点では、いわゆるIT系・テック系の企業群があまり上位にランクインしていないのが、特徴の一つと言えます。

IT系・テック系の企業は設立後の年数が比較的浅く、まだまだ環境・社会・ガバナンス等を顧みる余裕がない。ということなのかもしれませんが...こうした業種の企業群が今後どのように評価されていくことになるのか?(あるいは、このままあまり評価されることがないのか?)こちらも、その毎年の推移を見守っていきたいと思います。

2. Global 100 Index 2021にランクインした日本企業

続いて、日本企業のランクイン状況を確認してみましょう。
2021年版でランクインした企業は、次の5社になります。

Global 100 Index 2021 ランクインした日本企業

ランクインした日本企業では、エーザイ・武田薬品工業が医薬品、そしてシスメックスも医療用機器を主力とする企業であり、医療関係業種の企業が多く評価されているのが日本企業の一つの特徴と言えるかもしれません。

また、シスメックス・コニカミノルタ・武田薬品工業の海外売上高比率は概ね8割に達し、エーザイも6割程度となっています。ここに、前年2020年版でランクインしていた企業(花王・パナソニック・トヨタ自動車)も加えると、やはりグローバルに展開している企業ほど、こうした取り組みに熱心と言える傾向があると思われます。

ちなみに武田薬品工業は6年連続、積水化学は4年連続の選出となっていますが、前年2020年版でランクインした花王(86位)、パナソニック(89位)、トヨタ自動車(92位)は今年はランク外となっています。

Global 100 Index 2021 日本推移

* 世界のランキングを見ても、5年前の2016年版と顔ぶれが大きく異なっており、評価指標(項目)もその年々の社会的要請などに基づき、変更(追加)されていく傾向があるようなので、なかなか安定的にランクインするのが難しいリストと言えるのかもしれません。

3. Global 100 Indexへのランクインした日本企業の成長性

最後に、企業の持続的成長に欠かせない、これら企業の業績動向はどうなっているのでしょうか?

Corporate Knights社の発表によると、このGlobal 100 Index掲載企業は、「2005年2月から2020年12月末までの期間において、Global 100 Indexに掲載された企業への投資収益は263%で、ベンチマークとする指標MSCI ACWI(全世界株を代表する株式インデックス)の220%を上回る」としており、投資パフォーマンスとしては、良好なようです。

なお、実際の業績を確認するに当たって、今回は一旦、開示情報が把握しやすい日本企業に絞って見てみることにしました。

ここ5年間の売上高の推移*で見ると、大型買収の影響があった武田薬品工業を除くと、2021年3月期(予測)で2016年3月期を上回る企業は2社しかありません。
さらに、本業の稼ぐ力を示す営業利益ベースの推移*で見ると、2021年3月期(予測)で3社が2016年3月期水準を下回っており、1社もほぼ同水準の予測で、ここ5年間ではこれらの企業が持続的成長を続けてきた。と言い難い状況になっています。
*各社の売上高・営業利益の推移を比較するため、2016年3月期を「100」として指数化しています。

Global 100 Index 2021 日本企業の売上高推移

Global 100 Index 2021 日本企業の営業利益推移

確かに、業種特性などもあるでしょうし...2021年3月期は、新型コロナウィルスの影響がたぶんに大きく...5年という期間も持続可能性と言うには短すぎる期間と言えるかもしれませんが...現時点かつ日本企業においてはこれら社会・環境・ガバナンスに対する取り組みが、まだまだ安定成長の原動力となっていない。と言えるのではないでしょうか?

こうした点も、もう少し長期の視点で、Global 100 Indexに入る日本企業の今後の動向と併せて追っていければ。と考えております。